失敗談

【時間がない】

 

年の暮れ

旅行初日、オレは必死に車を走らせていた。

柿食へば・・・の法隆寺に向かうためだ。

しかし、なぜこんなことになったのか・・

 

その日、出かけるため、ナビに目的地を入力したときのことだった。

移動時間が7時間とでた。

 

あせった。

ネットと車載ナビの計算方法に違いがあるらしい。

「ちっ・・昨日ネットで検索した時は、5時間と出たのに。これじゃ予定が台無しじゃないか」

 

気持ちを切り替え、車を飛ばすことにした。

少しずつ、到着予定の時間が早まってくる。

目的地に近づく頃、ナビの到着予定は、1時間も縮まっていた。

ふぅ・・なんとかなりそうだ。

フッ、さすが、オレ。

 

ナビに従い、高速を降りた。

そのまま、ホウリュウジに向かう。

あと、8kmか。あれ?インターからこんなに近かったのか?

・・・と思ったことを覚えている。

 

ふと、嫁が気になることを言い出した。

「ねぇ、法隆寺に向かっているにしては道が狭いね。なんか山道みたい」

 

うん? 確かに。

でも、この車の混みようは、参拝客が来ているせいじゃないの? きっと。

 

まもなくして着いた。

ホウリュウジの文字が見える。

 

 

 

宝龍寺

 

oh! なんてこった。

 

ホウリュウジに違いはないが、字が違う。

どうまちがえた?「寺」しか、合ってないぞ。

 

思い浮かべる・・・

ナビにホウリュウジと入力したら、同音の候補がズラッと出た。

エリアを奈良県に絞る。

目的のホウリュウジをタッチ。

 

この時の見まちがえ?それともタッチミス?

・・・過去を振り返っているヒマがない。先に進まねば!

 

ナビを入れなおし、再出発。

 そこから法隆寺まで、一般道を走る。

 

注:パニックのため、「宝龍寺」画像は、撮っていません。


【拝観できない】

 

本来、 13時に法隆寺に着いていなければならなかった。

しかし、着いたのは14時30分だ。

遅れた時間のため、ここでは短めの拝観になる。

・・・が、とにかく、間に合ってよかった。 

 

境内では、有名な句碑(くひ)があった。

『柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺』

 

書いてある碑文(ひぶん)が、すなおに読めたわけではない。

『鐘』『鳴』『隆』の字はなんとなくわかるが、オレの左手で書いたような字にしか見えない。

さらに、この詩がなぜ名句になったのか、理解できない。

 

 さて、法隆寺は広く、敷地面積、実に18万7千平方メートル。なんと東京ドーム4個分だ。

急いで境内を回ったが、あっという間に1時間が経ち、もう15時30分。

すぐにでも次の観光地、東大寺へ移動しなければ。

 

車に乗り込んだオレは、ふと思った。

そうだ、東大寺の拝観時間は?

調べると、冬場は16時30分で閉門。

東大寺に着く予定が16時10分頃。

 

うぉ? 拝観時間がたった20分だと?

それなら、法隆寺を出なければよかった!

 

・・・諦めてお風呂にしよう。

宿泊予定の道の駅「針テラス」に温泉がある。

 

通りがかった東大寺付近の通りは、にぎやかな様子が伺えた。


【お風呂事件】

 

道の駅 針テラスは、針インターに近接している。

 

和洋中のレストラン、フードコート、土産物屋、コンビニ、そして、はり温泉ランドがある。

温泉は、駐車場より少し高台にあり、離れた場所からも施設の灯りがみえる。

「バタバタしたので、湯ったりするか」などと、頭の中でうまいこと言ってみる。

 

まずは、温泉には向かわずに施設内を物色していたが、そろそろライトで明々としている温泉ランドに向かう。

 

行って見ると、ただ、ただ明々としているだけだった。そして目についた文字。

 

 

休館日

 

・・・ドアに張り紙。

なんだこれは? 書かれている内容は、 年末のため休業の云々。

 

思えば、いつもの車中泊は、前日に自宅で入浴を済ませてから目的地近くで宿泊し、翌日から観光のパターンだった。

今回は、早朝出発。観光をサクっとすませ、お風呂までいただいてしまおうという・・・甘い考えだった。

 

スマホ検索で近くの営業中の温泉を探す。

「ゆららの湯」がヒット。

片道30分のところらしい。

ん?先ほど通過してきた東大寺のすぐ近くだ。

 

また戻るのか・・・休館が先にわかってさえいれば・・・

 

年末で営業しているところが少ない中、その温泉は恐ろしいほど混んでいた。

 

結局、温泉入って戻ってきたのが3時間後。

昼間、必死に縮めた1時間が、軽く飛ぶ。

 

 その夜、針テラスで食事をとれたことが、唯一の心の救いとなった。

 

・・・上記の話は、筆者が体験した実話である。

 

翌日

東大寺観光へ